月別アーカイブ: 2007年5月

いつものように

今日も、いつものように忙しい木曜日になりました。
でも、今週はご注文が少なかったので、仕事量が減って少し余裕がありました。
朝は先ずいつものように、昨日からすでに仕事をしている酵母のご機嫌を伺うことから始まります。
本当に、この酵母はただの一度も私を裏切ったことはないんです。
今朝も、このブログの5月3日の記事の写真のように、いつものように泡を吐きながら醗酵してくれていました。
そしてパン生地をこねると、いつものように、バスクの子守唄を聴きながらコーヒータイムです。
この地で店を持ち、本気でパン屋をやるようになって3年半ほどになりますが、この間ずっと、いつものように変わらぬ品質のパンを焼くことが、どれほど難しいかということを思い知らされています。
いつものことがいつものようであることの裏には、大変な努力が必要なんですね。
子どもの頃からずーっと、根気がない、一つのことが長続きしないとさんざんに言われた私は、同じことがずっと続くことに耐えられず、恐怖さえ覚える性格でした。
それがこの歳になってやっと、いつものことがいつものように出来ることの意味を悟り、「継続は力なり」の言葉の意味も骨身にしみて分かったような気がします。
今頃になって本気でパン屋をやるんなら、何でもっと若い頃からその道で努力して来なかったのかと、思ってももう遅いですよね。
でも、いろいろ回り道して来たことも、きっと死ぬまでには何かのためにはなるに違いないと信じて、これからは「いつものように」を大切に生きて行こうと思っています。




  告知情報

 「カフェクラブの集い」 開催のご案内
6月3日(日) 午後2時から、時間の許す限り
参加費 お一人1000円
今回は、コーヒー VS 紅茶。
ウィスキーフレーバーのカフェ・ラテとマサラ・チャイの対決もお楽しみに。

 「ふるさと会津 工人まつり」 出店のご案内
6月9日・10日の両日、会津三島町の生活工芸館前広場で開催される工人まつりに、「空色カフェ」応援出張カフェを開店します。
自家焙煎コーヒーとシナモンロール、スコーンをお召し上がりいただけます。
イベントや地理のご案内は、「生活工芸館のホームページ」をご覧ください。
また併せて「空色カフェ」のホームページもご覧ください。

 食工房のホームページよりご案内
「パンだより・緑雨号」2007年6月号のPDF版を掲載しました。
ご覧いただければ幸いです。
※ダウンロードのページへのリンク

どんみりとした暗褐色の液体となって・・・



以前、連れ合いの知人から届いた一通の手紙の中に紹介されていた、野上弥生子の小説「森」の中に出て来るという、コーヒーのイメージ・・・。
この「どんみり」という言葉を初めて聞いた時、思わず広辞苑を持ち出して調べてしまった私でした。
多分、造語だろうと思っていましたが、ちゃんと載っていました。
曰く、「どんより」と同意、黒い物が固まりあって澱んでいる様子、とあります。
私は、この作品を直接読んだことはありませんが、その手紙の中に紹介されている、道具立てやコーヒーを入れている時の情景描写から察するに、この小説の中に登場するコーヒー、ほぼエスプレッソに間違いありません。
ここでもまた物語の中でコーヒーが、絵になる風景を演出しているというわけです。





 エスプレッソで入れるどんみりコーヒー
エスプレッソは、イタリア語で「急ぐ」の意、その言葉どおりエスプレッソコーヒーは速いのが身上です。
電気式のエスプレッソマシンで入れるのが一般的ですが、直火ポット式の道具も趣があっていいものです。
豆は、イタリアンローストと呼ばれる超深炒りのもので、見た目はほとんど真っ黒で油分が滲み出して表面がテカテカしています。
これをまた特別細かく粉に挽いて使います。
エスプレッソコーヒーは、沸騰した湯と蒸気の圧力で抽出しますので、非常に短時間で抽出されます。
しかも、フィルターはドリップ式のような布製ではなく、漉し網のような金属製のフィルターですから、コーヒー液の中にはコーヒーの微粉末が混ざっていて、それこそ「どんみり」としています。
そのまま飲むと、ドロッとしていてたまらなく苦いという感じですが、意外に後味に残らないサッパリとした風味にはちょっと驚かされます。
「カフェ・カプチーノ」は、砂糖を入れて甘くし泡立てたミルクにエスプレッソコーヒーを混ぜ、シナモンパウダーを振りかけたものです。
また、「カフェ・ラテ」は直訳するとコーヒー牛乳の意で、エスプレッソコーヒーとミルクを混ぜた飲み物の総称です。
こんな風に、いわゆる「コーヒー」と呼ばれる飲み物も、世界中には実に沢山の種類があって、それを語りだせば全くキリの無い話になってしまいます。
ま、追々回を重ねる毎に、一つずつ紹介して参りましょうか・・・。



                               All Illusts by Machiko Aoki

価値ある情報



前に「モノづくり」という記事の中で、・・・ネット上で情報を作り出すことの簡単さに比べれば、モノづくりは手間暇がかかります。・・・と書きましたが、少し訂正させていただきます。
確かに、うわさ話や憶測を並べるだけなら簡単かも知れません。
しかし同じ情報と言っても、責任の持てる、また多くの人にとって価値のある情報を発信しようと思ったら、モノづくりと同等かそれ以上の労力と時間がかかるのですね。
時間と労力を費やして取材し、資料や文献を調査し、著作権などにも配慮を尽くすとなると、並大抵のことではありません。
私がこのブログに書いていることなどは、個人の意見を最大限良心に基づいて述べている範囲ですから、客観的価値という点では「無ければ無いで差し支えない。」程度のものに過ぎないかも知れませんが、それでもそこそこ手間暇はかけているつもりです。
さて、このブログに「庄内拓明の知のヴァーリトゥード」というサイトをブックマークしてあるのに気づいて、ご覧になった方もいらっしゃると思います。
takさんは、実は私の三十余年来の友人です。
彼の人柄をすっかり知っているから言うのですが、このサイトは本当に手間暇かけています。
アクセスの数の多さは、そのまま情報の価値を物語っていると思えるのは、きっと私だけではないと思います。
モノも情報も実は同じ、人がつくるもの、だからそこに注ぎ込まれた何かが大切なんだと思っています。

沈思黙考

忙しさの後、一息つける時間を得た時、あなたは何をしますか。
本を読む、音楽を聴く、映画を観る、外に出かける、人それぞれに状況によっていろいろだと思いますが、私は、本当に何もしなくて良い時間が与えられた時は、迷わず自然の風景の中で、あるいは静かな部屋の中で、沈思黙考することを選びます。
それで何を考えているのか・・・、それはご想像にお任せします。
そしてここもまた、沈思黙考した場所の一つでした。

ジンジャークッキー



食工房の焼き菓子には、たいてい何かしらスパイスワークがしてあります。
ジンジャークッキーは、名前からしてスパイス入りのクッキーですが、皆さんが思うほどクセのある風味ではありません。
よく「子どもに食べさせて大丈夫ですか?」と質問されるのですが、いわゆるジンジャー=ショウガの辛みはありませんので、小さい子ども達が食べても大丈夫です。
それより、ジンジャーの甘さを感じさせる香りのおかげで、砂糖控え目でも十分な甘さを味わった気分になれます。
甘い香りのするスパイスを使って砂糖控え目のレシピを考えるのは、健康志向に適っていますし、何より第一やっていて楽しい仕事です。
ジンジャー、シナモン、カルダモン、アニス、バニラ、ナツメグ、クローブなどを目的によって配合し使い分けています。
ジンシャークッキーでは、ジンジャー+シナモン少々、あとは秘密・・・です。



 ラベルにも遊び心を
最近はパソコンとプリンターのおかげで、手の込んだカラーラベルも簡単にプリント出来ますが、元になるイラストはすべて連れ合いの手描きです。
以前は、一枚ずつ色鉛筆でワンポイント色差ししていたこともありましたっけ。
春と秋で、木の葉の色を変えたり、キャラクターの洋服の色を変えたり、いろいろ遊んでいましたが、仕事量が増えてからはそういう遊びが出来なくなってちょっとさみしい気がしています。
でもまたそんな遊びを復活させたいと思っています。

バスクの子守唄を聴きながら。


                                 Illust by Machiko Aoki

食工房の作業場で、いつも音楽を流していることは前にも書きました。
パン生地にいい音楽を聴かせると、何となくパンの出来が良いような気がします。
早朝、こねあがった生地をホイロ(醗酵室)に入れると、いつも最初にかけるのは、バスク(スペインの一地方)の女性歌手Olatz Zugasti (オラーツ・ズガスティ)のblun blunka というアルバムです。
子守唄を集めたこのアルバムは、パン生地もお気に入りかどうか分かりませんが、私はとても気に入っていて、その中の9曲目がとても簡単な歌詞で曲も可愛らしいので、この曲は一緒に歌ったりします。
今まで全くなじみのなかったバスク語なので、発音がよく聞き取れませんが「アンマリシャンゴ アイタリシャンゴ ピーリンパーラン チャンチャンチャン」と聞こえます。
この文句をずっと繰り返すだけなんですが、いいですよ。
もちろん他の曲もみんな素敵ですけどね。
それから、余裕がある時はいつも曲に合わせてリコーダーを吹くんですよ。
そんな私を、「笛吹きパン屋」と呼ぶ知人もいます。
朝早くに、シャッターの閉まった店の中から聞こえて来る笛の音に、ご近所の方は気がついたでしょうか?


 プレーンロール
コロコロと丸く膨らんだロールパン、フィンランド語なら「プッラ」ですね。
赤ちゃんみたいに可愛らしく出来るのは、きっと子守唄を聴きながら醗酵したからにちがいありません。
プレーンの名のとおり、中に何も入っていませんので、いろいろな食べ方が楽しめます。
真ん中に深く切り込みを入れて、小豆あんをはさめばアンパンに、ジャムをはさめばジャムパンに、その他何でも自在にアレンジしてください。




 本日の食工房
今日は初めて、全く見ず知らずの方がインターネット上で食工房を見つけ、遠く新潟から場所を探し探し訪ねて来てくださいました。
いやー、驚きました。そしてうれしかったですね。
インターネットの影響力や使い方を、少し学んだような気がしました。

粉屋のダスティー



食工房ではライ麦の全粒粉を自家製粉しています。
何と言っても全粒粉は酸化が速いので、こまめに使う分だけ挽くようにしています。
粉挽きの時は、粉塵が舞うのでいろいろ工夫しているのですが、それでも作業が終わって見ると鼻の頭や頬に粉がついて真っ白で、いつも連れ合いや娘たちに笑われてしまいます。
そして私は決まって、「のばらの森の物語」に出て来る粉屋のダスティーを思い出します。
写真の製粉機は、もうかれこれ25年くらい使っているものです。
石臼ではありませんが、少し回転数を落として発熱を少なくして使っています。
いつもはライ麦専用ですが、炒り玄米を挽く時もあります。
また、たまにご近所の方に頼まれて、もち米を団子の粉に挽くこともあります。
ちなみにこの製粉機、モーターの入っている架台の箱は私の自作です。



 ライ麦入り角食パン
自家製粉のライ麦全粒粉10%入り、繊維質を取りたいけど食感もそこそこに、という方におすすめのバランスの良い配合です。
トーストした時、白パンでは味わえない香ばしさと麦芽の風味が、いかにも食欲をそそります。
バターとメイプルシロップの重ね塗りで召し上がってみてください。これが一番のおすすめです。

マイブログ中間報告

あと何日かあるのですが、このブログを書き始めてから間もなく二ヶ月になります。
始める前は、更新は一週間に一回くらいと思っていたのですが、いざ書き始めてみると、書くことがあるうちは毎日書いた方がいいなと思いなおして、ずっと一日も休まずに書き続けています。
最近では、とにかく毎日一編を日課にしてどこまでやれるかやってみよう、という気でやっています。
ところで私の場合ですが、ブログを書くことは即ち公衆の面前、大道に立つのと同じと考え、緊張感を持って取り組むことにしています。
当初はいろいろ悩んで、匿名のコメントを受け付けない設定にしたり、コメントを公開しない設定にしたりしましたが、私の場合はそれでは意味がないと悟り、誰からでもコメントをいただき、原則すべて公開としています。
トラックバックに関しては、今一仕組みがよく分からないのと、ほとんどの場合特定のサイトへ誘導することやスパム目的だったりすることが多いので、無害と確認出来るもので、こちらの記事に多少でも関連のあるもののみ公開しています。
どんな方が見てくださっているのか分かっている方もいれば、全く想像のつかないところで知らない方が見てくださっているかも知れないのがインターネットの世界、私の発信する記事がほんの爪の先ほどでも、この世界の平和や私も含めた人々の幸せに貢献出来るようだったら、こんなうれしいことはないと思っています。

 本日の食工房
今日は恒例、忙しい木曜日です。
実は、午後7時半を過ぎてまだ仕事が終わっていません。
今朝は5時前から始まっていますので、何時間労働になることやら・・・。

コーヒーを11年間飲まなかった話

コーヒーが好きで、コーヒーを商売のネタにしている私ですが、過去には11年もの間一滴もコーヒーを飲まないで過ごしたことが、実はあるのです。
昨日の話に関係してくるのですが、マクロビオティックを厳格に実行し始めていた当時の私は、コーヒーや煙草に嫌悪感を覚えるようになり、以来11年間コーヒーを口にしませんでした。
何かというと極端から極端へ走る性格の私は、コーヒーも紅茶もアルコール類も一切受け付けず、飲み物は専ら三年番茶で、たまに気が向くとタンポポコーヒーや小豆コーヒーと称する自然食系の健康飲料でした。
一時は、天然マコモの粉末をお湯に溶かして飲んでいたこともありました。(これは、全くおいしくなかったことだけを覚えています。)
ちょうどその頃から自然食品の商売を始めた私は、玄米食の効用を説き、健康は先ず食事からと宣伝して歩きました。
コーヒーは体に悪いので止めた方が良いとも申し上げました。

それが突然、再びコーヒーを飲み始めたのは、一体どういうわけか?と言われても、あまり明確な理由を思い出せません。
ただフッと「コーヒーが飲みたい・・・」と思った心の動きに、素直に従っただけというのが本当のところです。
東京に仕入れに出かけた時、昔行きつけのコーヒー豆屋の前を通りかかり、思わず衝動的に昔どおりのブレンドで豆を1㎏ほど買って帰りましたが、連れ合いは驚きのあまり目が点になっていました。
でも、二人で久しぶりにコーヒーを飲んだら、妙に納得がいって幸せで不思議な気分でした。
そして数年後には自家焙煎をやり始め、今ではコーヒーが商売のネタになり、よそのお店でも使っていただくほどになりました。
人生、何が起こるか分からない、と言うよりは、ただ私が気まぐれなだけかも・・・。

コーヒー断ちしたのが25才の時、11年ぶりにコーヒーを飲んだのが36才の時でした。


 コーヒーまで紅茶!?
ネパールと言えば紅茶の国、というイメージが強いのは私ばかりではないと思います。
ところが、コーヒーも生産されているのですね。
生産量は多くはないようですが、外国向けに輸出もされています。
このネパールのコーヒーがちょっと変わっていて、私は最近注目しています。
コーヒーの主産地である中南米産のものと比べて、明らかに異なる個性を持ったネパールコーヒーの風味は、一口で言えば「お茶の雰囲気」を感じさせます。
同じくらいの焼き加減でも意外に水色が薄く、しかしそのわりには苦味があります。
その苦みが何と言ったら良いか、薬草のような、要するに紅茶的なんですね。
多分、ローストの苦みよりもカフェインの苦みを感じているからなのでしょう。
そして、酸味がとても心地良いのがもう一つの特長です。
フルーティーで、いつまでも口に含んでいたい感じです。
食工房では今、ネパールコーヒーの中からサガルマータ(エベレストのネパール語名)とアンナプルナ(豊穣の女神の意)のニ銘柄を取り扱っています。
※サガルマータは、仕入れ元で売り切れ終了となってしまいましたので、食工房でもまもなく売り切れ終了となります。

                                                                                 All Illusts by Machiko

セルフヒーリング

50代半ばを過ぎると、これまでの人生の過ごし方が心身の健康面に、結果として現れて来るのだなぁということを強く感じます。
私などもそうですが、運動不足がちだった人は、いち早く体力の衰えや不足を感じざるを得ないし、逆に体を酷使して来た人は、あちこち痛みに悩まされているかも知れません。
若い時と違って、ちょっと風邪をひいたくらいでも、すぐに回復して元気になれるとは限りません。
先には老年期が待っている50代にとって、心身の健康は何にも増して重大な関心事に違いありません。
セルフヒーリングというのは、直訳すると「自分自身を癒すこと」ですが、その中身は多種多様です。
専門家がコーディネイトするセルフヒーリングもありますが、自分で学びながら自分で実行出来る治療法や健康法であることがあくまで本筋です。
私は子どもの頃、あまり体が丈夫な方ではなく、若い頃からずっと人一倍健康への関心が高かったので、実にいろいろなことを試して来ました。
今ブームになっているマクロビオティックも、30年くらい前にかなり厳格に実行していたことがあります。
今でも一部を自分の健康法の中に取り入れていますが、ここまで来て分かったことは、いろいろな健康法に関する情報を自分に合ったバランスで実行するためには、先ず自分自身を知ることを何より優先すべきということです。
何故かと言うと、体の状態はその人の心の状態と密接に関連していて、それまで過ごして来た人生の中で培われた性格と体質と、そこに現れている状況は一つのものであるからです。
小難しい話になってすみません。
また機会を改めて、実際にやっていることを少しずつ紹介して行きたいと思います。
それでは、今日の会津の気持ちの良い風景をご覧に入れて終わりにします。
こんな風景が見えるところでしばしボーっとすることも、私のセルフヒーリングです。